。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
風呂から上がって、戒の部屋にいくと布団が敷いてあった。
誰かが敷いておいてくれたんだな。
俺はその上にあぐらをかくと、ショッピングモールで買ったぬいぐるみの紙袋を手繰り寄せた。
何だかバタバタして渡しそびれちまった。
さすがにこの時間だと朔羅も寝てるだろうな。
起こすのも悪りいし、明日にするか……
そう思って布団の上にごろりと横たわる。
この部屋は……
百合香(ユリカ)が使っていた部屋だ。
きれいで、優しかった血の繋がらない俺の姉貴―――
俺は彼女に恋をしていたときもあった。
だがそれは漠然としたもので、掴みどころがないものだった。
百合香の娘、朔羅に対しては―――?
俺は今まで色んな女と付き合ってきたけど、朔羅に対する感情の非にならなかった。
あいつは俺の中で特別だ。
百合香に抱かなかった燃えるような感情と、何もかも奪ってやりたい汚い気持ち、それから誰よりも大切に慈しみたいという気持ちが混在して、俺の中をいつもかき乱す。
そんな女初めてだ―――
ぼんやりと考えてると、人の気配を感じた。
ほんのかすかな気配だったが、誰かが部屋の外に居る。
「誰だ!」
俺は乱暴に引き戸を開けた。
桜―――……?
淡い色をした花びらが舞っていて、その中に女が一人。
とても幻想的だった。
いや、幻覚だと思っていてもその中にいる愛おしい人は現実に姿を現していた。
舞い散る花と同じ名前を持つ俺の愛しい女。
「朔羅……」