。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
気配!?
結局リコの家でそのまま喋り捲ると、夕食を呼ばれ帰るときはすっかり暗くなっていた。
時間を見ると夜の9時だった。
暗い夜道をリコと二人で歩く。
この辺は住宅街。ブロックで立てられた塀が連なっていて、所々頼りなげな街灯が道を照らしてる。
「送ってくれなくていいよ~。暗いし、危ないよ」
あたしはリコを心配そうに見た。
リコは自転車を引いている。あたしを駅まで送ったら、それで帰るつもりだ。
「大丈夫だよ。ここ暗くて人通りないし、朔羅一人じゃ危ないよ」
いやいや……ぜってー大丈夫だ。
痴漢でも強姦魔でもあたしは返り討ちにする自信があるからな。
だてにヤクザの娘やってるわけじゃねぇよ。
それよりいくら自転車だからと言っても帰り道のリコが心配だ。
でもリコは慣れているせいだろうか、相変わらず元気に話しに夢中になっている。
あたしもリコとの会話は楽しいから、しばしそんな不安が薄らいでいた。
油断してた……って言ってもいい。
ヒタっヒタっ……
5分ぐらい前からずっと押し殺した足音があたしたちの後ろから近づいてくる。
リコの話を聞きながらも、あたしは眉間に皺を寄せ、その足音に耳を傾けた。
押し殺しているのに、その足音は乱暴で不快な音だ。
尾行に慣れてない人間で、しかも明らかにあたしたちを狙っている。
人数は―――
二人……いや、三人。
それにその足音とは全く異なる気配を一つ感じる。
足音はしなかったが、こっちも明らかにあたしとリコの動向を探っているようだ。
まるで闇の中を徘徊する獣のように、しかし不思議と殺意や悪意を感じられなかった。