。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「逃げても無駄~♪」
前方から声がして、あたしは顔を覆った手の間から様子を伺った。
五人の若い男がポケットに手を突っ込んでにやにや笑いを浮かべながら突っ立ってる。
大学生か、もちょっと上だろうか。髪を派手な色に染め上げ、服をだらしなく着崩している。
ヤクザのチンピラよりももっと格下の男だ。筋もんじゃないことが分かる。
バタバタバタ!!
後方からも乱暴な足音が迫ってきて、あたしたちのすぐ後ろで止まった。
振り返ると、あたしの予想通り三人の若い男たちが立っていた。
「ったく!手こずらせやがって」
「まぁそう言うなよ。すっげー上玉じゃん♪やっりー☆」
前方の男たちの一人が下卑た笑いを漏らす。
「さ…朔羅……」
リコが怯えた声で、あたしの腕をぎゅっと握った。
リコの手はかわいそうなぐらい震えている。
ち!
リコがいなきゃ、こんな奴らすぐにでも倒してやるのに。
「……大丈夫」
あたしはリコを安心させるためにリコに囁くと、男たちを一瞥した。
「こっわ~!睨まれてるよ。俺ら」
ケタケタと笑いながら、男たちがあたしたちの周りをゆっくりと囲む。
あたしは素早く辺りを見渡した。
T字路の左も右も道を塞ぐようにワンボックスカーが横付けされている。
来た道を振り返ると、こっちにもセダンタイプの車が道を塞いでいた。
周りはブロック塀。飛び乗れない高さじゃないけど、リコがいるからそれも無理だ。
退路は断たれた―――か……
どうする?
短い間でぐるぐると考えだけが巡る。
「大人しくしろよ。そしたら痛い思いしなくて済むよ?」男の一人が舌なめずりをして一歩踏み出した。
あたしはリコに分からないよう小さく拳を構える。
そのときだった。
「待ちいや」