。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
空気をも震わす良く通る、それでいて鋭い声音が頭上から降ってきた。
いや、正確にはブロック塀の上の何者かが声を発したってことだ。
あの、得体の知れないもう一人の気配。
この声の感じ、明らかにこいつらの仲間じゃないことが分かる。
こいつは……こんな野郎どもより数十倍も格上だ。
街灯の弱々しい光の中で、その上の人物の顔が見えない。
でもどうやらブロック塀の上に両足で立ち、しゃがみ込んでいるようだった。
折りたたんだ膝と、黒い編み上げのブーツ、黒いコートの裾が見える。
何もんだ!?
「何だよ。てめぇは」
男の一人が怒鳴るように声を発した。
「その女どもに手ぇ出してみい。お前ら只じゃ済まされへんで?」
関西弁……?
それもこの声どこかで……
あたしたちの周りを取り囲んでいた男共が顔を見合わせると、どっと笑い声をあげた。
「只じゃ済まさないって?何するってんだよ??大体ここは東京なんだよ。だっせー関西弁喋りやがって」
ひゃっはっはっは、と男たちが笑い声をあげる。
塀の上の男はゆっくりと膝を伸ばし、立ち上がった。
「カッチーン。お前ら今、日本中の関西人敵に回したんやで」
男をとりまく空気が……変わった……
周りの男たちは気づいていない。
あたしはごくりと喉を鳴らした。
「覚悟しいや」