。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
低い声。ドスを利かせた声。
こいつ……場慣れしてる。カタギじゃねぇ。
「朔羅……」
リコが不安そうに怯え眉を寄せて、あたしを見た。
「大丈夫……」と言いかけて、あたしは勢い良く振り返った。
もう一人……得体の知れない何者かの気配がT字路の向こう側から迫ってきている。
あたしは急いで前に視線を戻した。
「いてまえ」
塀の男が顎をしゃくったと同時に、あたしは背後を振り返った。
それとほぼ同時にあたしのすぐ後ろにいた男たちが闇へと引っ張られる。
「何だてめぇ!」男の怒鳴り声が聞こえて、それはすぐに悲鳴へと変わった。
何かがぶつかる音がして、人が地面に打ち付けられる音に続く。
その間5秒。
ぞくり、と背中を嫌な悪寒が走る。
仲間がいやがったのか?
「な……何!?」
リコはもう目に涙を浮かべていた。
あたしはぎゅっとリコの手を握ると、彼女を庇うように後ろに隠した。
「何だてめぇ!!あいつらに何した!?」
前にいた男たちが次々に喚いて塀の男に怒鳴り散らす。
「言うたやろ?只じゃすまさへんって」
塀の上の男が軽くジャンプして、セダンタイプの車の屋根へ飛び乗った。
まるで猫か何かが飛び乗るように、軽やかで―――
優雅だった。