。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
部屋を覗いてみようかどうか迷った。
あたしは、組の他のもんに対してもそうだけど滅多なことがない限り、こっちから部屋を勝手に覗くことはしない。
親しき仲にも礼儀あり、だ。
襖を軽く掌で叩く。
……もちろん、返事はない。
「メガネ?……寝てんのかな?」
うーん……
ちょっと悩んだ末、あたしは思い切って襖をそろりと開けた。
畳の八畳間は薄暗く、メガネの姿は当然なかった。
メガネの部屋は前あたしの母さんが使ってた部屋だ。
以前叔父貴が泊って、あたしも一緒に寝たことがある。
そのときはまじまじと見てはなかったけど…
何か……生活感のねぇ部屋。
物が少ないというか。
押入れの手前に布団が三つ折にして畳んである。折りたたみ式のちゃぶ台が一つ、手前に置いてあった。
壁には学校の制服がきちんと吊るされ、その足元に鞄が置いてある。
ぐるりと見渡し、あたしは押入れがほんの少し開いていることに気付いた。
中から衣服のような黒いものがちょっと飛び出てる。
「あいつ、几帳面なんだか、そうじゃないんだか…」
ちょっと苦笑して、その服を押入れにしまい込もうとするため押入れをほんのちょっと開けた。
手前に詰め込んでいたんだろうな、襖を開けると同時に、黒い衣服がばさりと足元に落ちてきた。
「あ~あ…やっちゃった」
屈みこんであたしは黒い服を拾った。
それは服と言うより―――薄手のトレンチコートで……
ちょっと裏返った裾を見てあたしは目を開いた。