。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「メ、メガネっ!!」
あたしは振り向いた。
疑心に満ちた目を目一杯開いて。
「人の部屋で何やってるのさ~」
メガネはのんびりといつもの口調で答えた。
そして、ちょっと苦笑しながらトレンチコートに目を向ける。
「メガネ…………これ、お前の?」
メガネはトレンチコートを拾い上げると、ちょっと考えるように目だけを上にあげた。
「うん。クリーニングに出そうと思ってたんだよね」
いつもと変わらない柔らかい笑顔。
そこには何も後ろめたいことが隠されていなかった。
あたしの思い違い―――??
それともすっとぼけてるだけ―――??
「メガネ、お前…………虎…」
と言いかけたところで、
「あ!いたいた。お嬢にメガネ、もう夕飯の支度できてますよ!みんな揃ってるんだから」
とタクがひょっこり顔を出した。
「あ。今行きま~す♪朔羅さんも行こっ」
にこっと微笑んで、何でもないようにトレンチコートを畳の上に置いた。
「………え?……うん……」
あたしはそう答えるしかなかった。