。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
*戒Side*
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区役所の住民課をとぼとぼと肩を下げて去っていく朔羅。
俺は柱の影に身を隠し、その様子をじっと窺っていた。
「これでいいの?ぼーや」
受付の女が俺に声を投げかけてくる。
「うん♪ありがと」
俺は柱からひょっこり顔を出すと、受付のお姉さんににっこり笑いかけた。
女がちょっと顔を赤らめる。
「でも……いいの?あの子…随分気落ちしてたわよ」
ホントはお姉さんの言った住民票も、印鑑証明も必要ない。
血縁関係を証明できる保健証とかと印鑑があれば充分閲覧可能だ。
「ごめんね?嘘着かせちゃって…。僕、彼女の兄なんだけど、僕が養子だって知ったら彼女ショック受けるでしょう?最近、僕が本当の兄さんじゃないって疑ってて…それで……」
俺は顎を引いてちょっと上目遣いでお姉さんを見た。
「…いいのよ!そんなっ」
お姉さんは俺の演技にすっかり騙されて、ちょっと涙ぐんでさえいる。
悪りぃな。今戸籍謄本を見られるわけにゃ行かないんだ。
俺の転籍前の名字や所在を知られるわけには行かないんでね。
「お姉さん、協力してくれてありがとね☆」
俺は軽くウィンクをすると、軽やかに立ち去った。