。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
朔羅は―――
あいつが戦う姿を見たのはこれが始めてだった。
あいつはまるで龍が舞うがごとく、素早く力強く、優雅だった。
俺はあんな風に闘う人間を見たことがない。
美しく、気高い―――絶対的な――
王者、伝説の黄龍―――
正体がバレるって言っても、俺はいつまでも隠し通すつもりはない。
どうせいつかバレるんだし。
それに最近あいつの前で自分を偽ってるのが、ちょっと苦しいんだ。
あいつに……
嘘で固めた俺じゃない、ホントの俺を知ってほしい。
それで嫌われようと避けられるようと、構わない。
そんな風に思うようになったのはいつ頃からかな……
だからキスした―――?
いや、キスしたのはそんなのが理由じゃない。
もうずっと前からしたかった。
柔らかそうなあいつの唇に触れたかった―――
「まぁしっかりバレたわけやないし、お小言はあとできっちり聞くから今回は堪忍して?」
俺は顔の前で手を合わす。
再びにっこりスマイル。
龍崎が顔を歪めて、たじろいだ。
今度は効いた様だ。親しみを込めた関西弁とダブルで効いたか?
ってか、俺が助けた理由をこいつは知ってるから、公に怒りを表せないってとこが本音だな。
もちろん朔羅とキスしたなんてこいつには言ってないけど。
リリリリリ…
デスクに置いた電話が鳴り出して、龍崎はまだ怒り顔のまま渋々電話に手を伸ばす。