。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「何だ?今取り込み中だ」
不機嫌そうに顔を歪めて電話口に出る。
「―――分かった。繋げてくれ」
ちょっとの沈黙。きっと外線を繋げている最中なのだろう。
「―――龍崎です。どうもご無沙汰しております」
次に口を開いたときは丁寧な口調だったけど、表情は険しい。相手に気を許していない感じだ。
少しの間「ええ」とか「そうですね」とか相槌を打っていたが、急に表情ががらりと変わる。
龍崎をとりまく空気に不穏な何かが纏わりついている。
「―――何!?」
眉間の皺をより一層深く刻んで、切れ長の目を吊り上げた。
「…ええ、分かりました。その件はまた後ほど」
緊迫したままの口調で通話を終えると、龍崎は受話器を置いた。
険しい顔をしたまま、俺をじろりと睨む。
「……どないしたん?」
あまりに緊迫と怒気を含んだ表情だったので、俺は思わず計算なしで故郷の関西弁が出てしまった。
「島根県出雲の、鷹雄(タカオ)不動産がパクリ屋にやられた。手形(*①)が飛んで(不渡り)になって事実上の倒産だ。
持ちビルも抵当権(*②)に入っているらしい。
やったのは―――朱雀会だ」
*①一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する形式の有価証券のこと
*②早い話、担保物件
「鷹雄……」
俺は眉をピクリと動かした。組んだ腕に力が入る。
「鷹雄組は白虎会直系だったよな。おめぇんところのシマだ」
「正確には親父の…な」
親父……へたうって(失敗して)もうたな。