。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。

あたしはポカンと口を開けて、桜の木を見た。


「お嬢の見間違いじゃありやせんか?それとも夢か…」


見間違い?夢?


そうかもしんねぇ。


いつかやらかすんじゃないか、と思ってはらはらしてたからその不安が幻影を見せたのか。



「あたしが白昼夢でも見たって言いたいんかい!」


あたしは八つ当たりでマサの胸座を掴んで強く揺すった。


「お嬢!もうお勤めの時間でっせ?いつまでマサさんとじゃれてるんすか」


廊下の曲がり角から、拓也ことタクがひょいと顔を出す。


あたしはマサの胸座から手を離すと、二人をきっと睨んだ。





「てめぇら!お嬢って呼び方止めろって前から言ってんだろ!!



それから学校のことを“お勤め”って言うな!!!」




「「へい!すいやせんでした」」


マサとタクが慌ててひょいと頭を下げた。






読者のみなさんはそろそろお気づきかと思うが、あたしんちはヤクザ。


それも関東一帯の組を統べる青龍会4代目当主は、あたしの叔父貴でもある。




ちなみに3代目当主はあたしの親父だ。



母親と親父亡き今、一人娘のあたしはこの青龍会の構成員たちに、大切に育てられている。




と、言いたいところだけど、幼い頃から血の気の多い野郎共に囲まれて育ってしまったためか、こんな男勝りに育ってしまったあたし。



こんなんじゃ、好きな人にも見向きされねぇ。



ってのが、今のところの悩みでもある16歳、高校二年生だ。










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