。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
さっきの余裕の笑みはきれいに消し去られていて、深く刻まれた眉間の皺と鋭い視線が本気モードを物語っていた。


「力を増した玄武と朱雀を抑圧するため、青龍と白虎が手を組むって話だろ?耳にタコができるほど聞いたよ」


「ああ。青龍と白虎が手を組めば間違いなく日本の極道会のトップになる」


「でもあたしはそんなこと反対だ!白虎会は次期当主を誰にするか内輪もめが絶えないって噂で内部抗争も勃発してるって。そんなところと今手を組むなんて、危険極まりない」


「そりゃ普通に考えりゃそうだよな?手を組んでも裏切りや、内部戦争が起こっちゃ意味がねぇもんな。


そんな自爆みたいなこと、あの周到な男がやる筈がない。そんな博打あいつが打つはずがない」






戒はゆっくりとした動作で一口、二口タバコを吸い、灰を灰皿に落とした。


手馴れた動作に、ここ数日の間に覚えた吸い方じゃないことを悟る。






「龍崎 琢磨は実に周到な男だ。



強いだけじゃない。ここが切れる」




戒はこめかみをトントンと指で鳴らした。





「あいつぁ勝てねぇ博打を打つつもりはないらしい」







戒の言葉の意味が分からなかった。


叔父貴の頭がいいってことは知ってたけど、戒だって相当切れる奴だ。そんな奴が一目置くなんて、叔父貴は何を仕掛けたって言うんだ?


ふいに不穏な空気が過ぎってあたしは心臓の辺りをそっと押さえた。


まるで地を這う何か……


虎間がクラブZを襲撃したときのいやぁな感じだ。




ここから先は聞いちゃいけない。


そんな警告音があたしの中で鳴り響いている。






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