。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
う……そ、だろ―――
叔父貴があたしを青龍会の為にこいつと結婚させる……
確かに婚姻関係を結んだら、裏切りは絶対に許されない。万が一裏切りでもしたら一族…いや、白虎の破滅に繋がる。
あたしは膝の上で握った拳にぎゅっと力を入れた。
力を入れすぎて、膝が痛い程だ。
制服のスカートに皺が寄る。
「…とは言え、いきなり『こいつが婚約者だよ』なんて言われても、あんただって納得いかねぇだろ?
龍崎家で同居させて、打ち解けてきた頃合を見計らって全部話すつもりだったんだよ……」
納得……?
そんなん、幾ら仲良くなったって、するもんかよ……
だって、あたしはが好きなのは―――
「……ばっかみたい……」
かろうじて言えた言葉は…思った以上に弱々しいものだった。
「……朔羅…」
戒が今までのふてぶてしい態度から一転、急に悲しそうに眉を寄せた。
そんな顔されたって…
あたしの中に芽生えた悲しみが消えるわけない。
「あたしは叔父貴にこれっぽっちも相手にされてなかったってわけだ―――」
分かってたことだけど……
言ってて余計悲しくなった。
目頭が熱をもったように熱い。
泣くな。
最初から分かってたことじゃないか。叔父貴があたしを姪以上に見てないことなんて……
涙がこぼれそうになって、あたしは慌てて目じりを押さえる。
だけど指に感じる感触は生暖かい水滴だった。
何でだろう…
あたしこいつの前だと泣いてばっかだ。
メガネのときは良かった。無条件に気を許せる相手と思ってたから。
でもこいつは虎間だ。
いつだって気を抜けない。
でも
すっと伸びてきた戒の指が、あたしの涙をそっと拭う。
戒の指は温かくて……
悪夢を見てうなされたときに撫でてくれた、メガネの体温と同じだった。