。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
戒は大げさにため息を吐くと、
「サボり?珍しいね」とちょっと声音を優しくさせた。
メガネの口調だ。
だけど表情は虎間で、二つの人物が混在した目の前の男は―――
一体誰なんだろう。
「説教ならやめてくれ。ほっとけよ」
あたしはぶっきらぼうに言うと、歩き出した。
戒の横を通り過ぎようとして足を速めた。
戒はそんなあたしを横目で追うだけで、何も言ってこなかった。
だけどあたしが通り過ぎると、後ろからのろのろとついてくる。
あたしが足を止めると、戒も止める。
また歩き出すと、こいつもまた足を進める。
「何だよ!ついてくんな!!」
あたしは振り返って怒鳴ったけど、こいつはちっとも堪えてない様子で頭をちょっとかいた。
「別に傷心のあんたに漬け込もうとか考えてないけど、一人で落ち込むのはよくないぜ。
悩むなら一人より二人の方がいい」
一人で背負い込むなよ。
俺にも苦しさを分け与えろよ。
いつの間にかあたしの隣に来ていた戒は、そう言ってあたしの手を優しく握った。