。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。

こいつは……


あたしを騙してた。


でもいつでもあたしに優しかった。


あたしを傷つけることはしなかったし、言わなかった。


いつだってあたしを守ってくれた―――




この温かい手で。




不覚にもあたしの涙腺がまたも緩んで、涙が溢れてきた。


戒は何も言わず、何も聞かずにあたしの頭に手を回すと、自分の肩に抱き寄せた。


あたしは


戒の肩が温かくて、優しくて、こいつの前で声をあげて泣いた―――







戒の手のひらの温度が心地よくて、あたしは何故か放したくなかった。



手をつないだまま、学校とは反対方向の電車に乗り


隣り合って椅子に座り




早く電車が発車してくれないか、と小さく祈った。







< 318 / 558 >

この作品をシェア

pagetop