。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「悪かったな。
手荒な真似して」
戒はあたしの頬にそっと手のひらをやると、まるで大切な何かを包み込むように優しく……優しくなで上げてきた。
その手のひらの感触が叔父貴の温度と良く似ていた。
「何で……」
何に対して言った言葉だろう…
たぶん色んなことの疑問に対してだ。
何であたしのここに龍の彫り紋があると思ったのか、いつからそう思ったのか。
何で黄龍が二人存在するのか―――
その事実を知りえるのは叔父貴の他居ない。
「伝説の黄龍はつがいの龍だ。
天と地。二つに分かれた言い伝えがある。
つまり黄龍は二人存在する。その仮説は早い段階で考え付いたよ」
戒はちょっと眉を寄せると、あたしを覗き込んだ。
「そんなの……ただの伝説だよ…そんな噂話間に受けて、あんたバカじゃない?」
こいつがバカじゃないことをあたしは、いやって程知ってる。
でも悔し紛れにそう言うしかなかった。
もう全てがバレたから後の祭りだけど……
あたしの言葉に戒はくしゃっと子供のように屈託なく笑った。
「バカかもなぁ。でも何でかな、不思議なことに俺は小さい頃からずっと黄龍の存在にずっと憧れ続けていた」
あたしは唇を結んでただ、こいつの言葉の先を聞くしかなかった。
開かれた胸元を隠すようにぎゅっと腕を交差させる。
「龍崎 琢磨は間違いなく黄龍だ。それは他の人間でも知ってること。だったらあともう一人は?
俺が朔羅に目を付けたのは、お前が考えるよりずっと前からだよ。お前の写真を見せられる前から。
俺と同じ年頃の娘が龍崎には居るってことを聞いたその日から。
だけど確信したのは、お前を始めて龍崎 琢磨に紹介されたとき。
あいつの目は―――
姪以上に大切な者へ向けられる視線だった」
戒の笑顔がちょっと苦しそうに歪む。
切なくて、酷く哀しそうだ。