。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
雪斗が覆いかぶさってくる。
あたしは片方の腕を雪斗の首に回すと、逃げられないよう力を入れた。
『…何だ?今日はやけに積極的だな。いつもは嫌がって逃げるくせに』
『人は変わるもんだよ。雪斗』
あたしはちょっと笑った。
そう…変わるもんだ。
もう怖がるだけのあたしじゃない。
あたしの中には恐怖よりも―――憎悪の方が大きく膨れ上がっているから。
雪斗とこうなって初めて笑ったかもしれない。
雪斗の手のひらがあたしの頬を包む。
思いがけないほど温かくて―――優しい手のひら。
『お前―――やっと笑った。やっと笑ってくれた』
雪斗は一瞬泣き出しそうに瞳を揺らした。
思えば
雪斗は本当にあたしを愛してくれてたんだと思う。
ただ愛情の伝え方が人と違っただけ。
皮肉だな。
このとき初めて気づいたよ。
でも
あたしは決めたんだ。
『ばいばい、雪斗』
そう言って包丁の柄を握り直した。