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あたしが包丁を雪斗に突き刺すのと同時だった。
雪斗の背後に叔父貴の姿を見たのは。
悪鬼のごとく形相を変えて、両手に握った代々龍崎家に伝わる家宝の日本刀“雨龍(ウリュウ)を振り上げている。
あたしは目を開いた。
ドスッ!
鈍い音がした。
一つじゃない。二つだ。いや、一つかもしれない。
あたしが包丁で突き刺すのとほぼ同時に、叔父貴が手にした雨龍で雪斗の胸を貫いたからだ。
最初……
何が起こったのか分からない…という風に雪斗はゆっくりとまばたきをしていた。
だけど体に突き刺さった二つの刃(ヤイバ)をゆっくりと見下ろして、雪斗はあたしを見るよりも先に振り返った。
『………な……に!…たく…ま?』
唇の端から一筋の血を流しながら、雪斗が叔父貴を振り返る。
叔父貴の雨龍は正確に雪斗の心臓を狙い、その刃先が肺をかすめたのかもしれない。
『朔羅!!大丈夫か!!?』
叔父貴は雪斗からあたしを引き離すと、その厚い胸に掻き抱いてくれた。
雪斗とは違った温かい体温。
でもあたしはその体温をゆっくりと感じることはできなかった。
初めて
人を殺めたショックで、目の前が真っ暗になりそうだった。
『……叔父貴…何で?』
何とか声を振り絞る。
『朔羅……すまない。お前の様子が変だとは前々から思ってたけど、まさかこんなことになっていたとは…』
あたしは無言でかぶりを振った。
涙で滲んで叔父貴の顔がよく見えなかった。
包丁を腹に、日本刀を胸に突き刺さった雪斗は
血だらけの震える手であたしの方に手を伸ばしてきた。
『さく………ら……俺の……』
事切れる前、雪斗は小さく笑った。