。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
出口へ急ごうとするあたしの腕を戒が掴んだ。
「待て」
びくりとして恐る恐る振り返る。
「……まだ、何か…」
『せっかくホテルに来たんだ。ヤることヤッてから帰ろ~ぜ♪』
こいつならこんなことを言い出しかねない。
戒は真剣な顔であたしをちょっと睨むと、
「お前。まさかそんなぼさぼさ髪で外に出るとか言わねぇだろうな!!」
そう言われてちょっと拍子抜けした。
「ああ…髪?」
自分の頭に手をやると、確かにあちこちで絡まってサラサラした手触りは感じられなかった。
戒は呆れたように額に手をやると、
「信じられねぇ…」とため息を吐いた。
「ここに座れ!!俺が直してやる!」
鬼気迫る迫力に押され、あたしは大人しく言われたままベッドに逆戻りした。
手鏡を持たされ、戒があたしの背後で髪を櫛で梳かす。
「……ったく。せっかくきれいに手入れしてあるんだから、最後まで気を入れろよ」
ぶつぶつ文句を言いながらも、その手さばきは慣れたものだった。
考えたら、誰かに髪をこうやって触ってもらうのって、美容師以外ないな…
何か新鮮♪
なんて考えてると、あっという間に
「ほら、できたぞ」
と肩をぽんと軽く叩かれた。