。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
桜の花が舞い散る中、とぼとぼと歩いていると、前方に龍崎さんが立っていた。
あ……龍崎さん……
あたしは思わず足を止めた。
龍崎さんは舞い散る花びらをまるで掬うように手を掲げている。
何……やってるんだろ…
あたしは足を止め、その様子をちょっとの間見守った。
龍崎さんの白い横顔は、さっきの明るい笑顔ではなく、どこか影を宿した寂しそうなものだった。
今にも泣き出しそうな―――哀しい横顔……
でも
すごくきれいだったんだ。
「りゅ………」
何でも無い振りして声を掛けようと思ったけど、何故か戸惑った。
声を掛けようと上げた手が妙に中ぶらりんになる。
どうやって通り過ぎよう…そんなこと考えていると、ふいに龍崎さんがこっちを見た。
「……あ」
小さく声を出すと、にっこり笑う。
あれ?
さっきはあんなに悲しそうだったのに……
また笑顔―――
そんな風に思っていると、すぐ近くで激しい車のエンジン音が聞こえた。