。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「まったく…危ない運転しやがる」
龍崎さんは固まったままのあたしの前で、走り去った車の方を睨みつけていた。
「えっと……龍崎…さん?」
龍崎さんはくるりと振り返り、あたしが居ることに気づくと、びっくりしたように目を丸めた。
「あ…び、びっくりしたよねぇ」
と龍崎さんは引きつった笑みを返してきた。
あれ……?
今のはやっぱ聞き間違い?
でも確かに……
「ここら辺、道狭いからさ。川上さんも気をつけたほうがいいよ?」
龍崎さんはにっこり笑うと、地面に落ちたあたしの真新しい鞄を拾い上げた。
さっきの衝撃で落としてしまったようだ。
「あ、ありがと…名前……あたし教えたっけ?」
「うん。さっきの自己紹介で、覚えた」
え……自己紹介って、だってほんの一瞬だったし、誰も聞いてないと思ったのに……
「リコって可愛い名前だね♪川上さんにぴったり☆」
名前も……覚えててくれたんだ……
「あたしは朔羅。龍崎 朔羅。朔羅って呼んで?」
龍崎さんはあのこぼれるような笑顔をあたしに向けた。
舞い散る桜に負けないぐらいきれいで、可愛い笑顔。
「あ、あたしのことも!リコって呼んで!!」
龍崎さんはびっくりしたように目をぱちぱちさせて、あたしを見てきた。