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ホストクラブ!?
「改めてご挨拶いたします。虎間 道惨の家内で鈴音(スズネ)と申します」
ソファセットに四人落ち着いて、それぞれ飲み物が出された頃合を見計らい、姐さんが妙にかしこまって挨拶して頭を下げた。
きれいな手をきっちりテーブルに揃え、ゆっくりと頭を下げるその姿は―――まるでマナー教室の先生のように優雅で上品だった。
しかも…鈴音さん―――名前もきれい。
きれいに手をついて挨拶する姐さんに、あたしも慌てて頭を下げた。
「龍崎はんとは顔見知りやけど、朔羅ちゃんとお会いするのは初めてやし、うちのこと知ってもらいたいわぁ」
姐さんは叔父貴をちらりと見ると、にっこりと微笑みを浮かべた。
「どうぞ」と叔父貴が無言で手を差し伸べる。
くぅっ!叔父貴……
久しく見てなかったけど、やっぱカッコいい!!!
「うちな、京都の祇園で芸妓をしとったんどす。虎間は常連はんで、京のとある料亭で見初められたんどすえ」
へぇえ。どうりで、上品な物腰とか、戒とはちょっと違ったイントネーションを持つ独特の話し方が妙に納得いく。
「素敵な出逢いですね」
まるで運命の出会いみたい…あたしはうっとりと表情をゆるませた。
しかも…姐さんは今でもこんなに美人なんだし!きれいな着物着てお上品な踊り舞って、想像しただけでもうっとり。
隣でふてくされたように深く背中をソファに預けていた戒が、あたしの袖をちょっと引っ張った。
「そないなロマンチックなもんじゃないで」
呆れ返ったように、ちょっと耳打ちする。
へ?どういう意味…?
戒の言う通り、姐さんはちょっと忌々しそうに表情を歪めると、頬に手をついて吐息をついた。
「あの人、毎日毎日置屋(芸妓や舞妓を抱えている家のこと)に来て、長ドス振り回して、『結婚してくれなんだら死ぬ』言うて、そりゃしつこかったんえ」