。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
しんと静まり返った廊下に三味線の心地よいリズムとメロディーが僅かに響いている。
でもあたし以外誰も起きだしてきた気配がない。
その音は、まるであたしだけに……あたしに何かを報せるために聞こえてきた―――そんな気がした。
三味線は……
死んだ雪斗が得意だった。
死んだ母さんは琴を嗜んでいた。二人でよく合奏なんかしていたことを懐かしく思う。
最初―――雪斗の亡霊が三味線をかき鳴らしているのかと思った。
でも、不思議と怖い感じはしなかった。
三味線は―――と言うより、楽器全般か?その楽器を弾く人柄が音に現れる。
雪斗の音はもっと澄んでいて、きれがある音だ。
だけどこの音は……力強くて、でも暖かい。
同じ三味線なのに、まるで違う。
相夫恋(ソウブレン:雅楽の曲名。通常は管弦楽でされる)―――??
三味線ようにアレンジしてあるけど、間違いない。
相夫恋は男を慕う女の恋情を謳う曲だ。
音は廊下の奥から……昔母さんの部屋であったところから聞こえてきた。
戒―――……?