。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
あたしはノックせず、おずおずと襖を開いた。
あたしの予想通り、戒はベランダ側の窓を開け、窓のサンに腰掛けて三味線をかきならしていた。
あたしに気づくと、戒はびっくりしたように顔を上げた。
「わりぃ。起こしちまった?」
「いや…びっくり………した。お前三味線弾けるの?」
「ちょっとだけな」
戒は僅かに口元を歪めて笑った。
「それ。どーしたの?」三味線を指さす。
「あー、こないだ蔵の整理手伝わされたとき、見つけたんだ。古い琴も出てきたぜ?」
雪斗の三味線と、母さんの琴だ。ずっとしまいっぱなしだったのを、こいつが引っ張り出してきたってわけか……
「上手じゃん。相夫恋だろ?うまくアレンジしてあるよな?」
戒のはちょっとかじったって感じじゃない。かなり弾き込んでいるのが素人の耳にも分かる。
「へぇ。知ってんの?お前も弾けるのか?」
「ううん、三味線は。でも琴ならイケると思う。母さんに習ったから」
「へぇ」
戒は物珍しそうに目をぱちぱち。
「んじゃ、弾いてよ。合奏しようぜ?」
戒は軽やかに笑うと、押入れを開いた。下の段に若干埃を被ったものの、いたって傷みがない琴を引っ張り出した。
「え゛!やだよ。聞かせるほどの腕じゃないし、第一夜遅いじゃん」
「誰も聞いちゃいねぇよ。現に起きだしてきたのはお前だけじゃん」
そう言えばそうだな。
それに今日は、食事の場がまるで宴会のようの騒がしかった。
みんな飲むは飲む。
酔っ払っておねんね中だ。