。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
キョウスケを拾ったのは1年前の夏。
まだあたしが高校1年のとき。
キョウスケは18で家出少年だった。
着ているものも高価そうだし、物腰も上品。どっかの金持のボンだろうと思ってた。
雨が降ってる日で傘もなく、宛てもなく家の前をふらふら歩いていたキョウスケに声をかけたのがあたし。
長く居させるつもりはなかったけど、もう半年以上ここに居着いている。
よっぽどここが心地良いのか、家に帰りたくないのか。
キョウスケは叔父貴や直参(ジキサン:直属の部下)たちと兄弟の盃を交わした仲じゃないからいつでも帰ることは出来る。
ま、そのうち帰りたくなったら帰るだろう。
「朔羅さん揚げ出し好きなの?じゃぁ僕のもあげるよ」
にこにこしながら、メガネがあたしの前に小鉢をコトっと置いた。
「いや…ありがてぇけど、そんなに食えな…」
「お嬢!あっしのも!!」
「お嬢俺のも!!!」
「お嬢っ」
「お嬢」
なんか……
前にも激しく似たような光景を目にしたような。
あっという間にあたしの前には小鉢がずらりと並んだ。
こんなに食えねぇよ。
そう思ったけど、何故かあたしはぷっと吹き出した。
野郎どもがきょとんと同じ表情であたしを見る。
「ありがとな。でもそんなに食えねぇから、みんなで分けてくれ」