。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
予知夢!?
その晩あたしは奇妙な夢を見た。
―――
しんと静まりかえった細い廊下。
どんよりと薄暗く、冷たい空気に思わず身震いを感じた。
平坦な壁と廊下はどこまでも続いていて、その先は暗い闇の中だった。
だけどこの光景にはどこかで見覚えがあった。
どこで……?思い出せないけど、あたしの記憶の中には確実に存在してる。
どこからともなく風を感じて、あたしは廊下の奥に目をやった。
あたしの目の前を一枚のピンク色をした小さな花びらがひらひらと舞っている。
「桜……?」
その花びらを掌に受けて、あたしは一歩足を進めた。
一歩、また一歩と進めていくうちに、宙を舞う桜の花びらはどんどん増えていく。
どこから来てんだ?
あたしは訝しげに目を細めて、いつの間にか歩調を速めていた。
やがて廊下の行き止まりに突き当たった。
突き当たりは屏風風の襖があり、色の着いた水墨画で猛々しい白い虎が今にも牙を剥いてきそうなほどリアルに描かれていた。
あたしは躊躇わずのその襖を両側に開いた。
見覚えのある和室に、戒が背中を向けて突っ立ていた。上半身裸の背中には覚えのあるホワイトタイガーの紋。
顔だけをちょっと振り向かせ、その顔には不敵な笑みを湛えている。
相変わらず……憎らしいほど整った顔…
でも………戒?どうしてここに居るの?
そう問いただしたかったけれど、あたしの口は開くことなく、次の襖に手を掛けていた。
次の襖は鷹。
黒い羽根を優雅に広げて、雄雄しい嘴が迫力を物語っている。