。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
躊躇せずに扉を開けると、キョウスケがやっぱり上半身むき出しのきれいな筋肉がついた体をこちらに向け、ちょっと微笑んでいた。
両肩から彫り物の鷹の羽の先が見えている。
キョウスケ…あんま笑わないけど……やっぱ笑ったほうがいいよ。
でも何でお前がここに居るの?
そんなことを思いながらも、やっぱりあたしは口を開かなかった。
無言でキョウスケの隣を通り過ぎる際、こいつがゆっくりとあたしに背を向ける。
その背中にはやっぱり鷹の紋。
目の前には再び襖が登場。
今度は鴇。赤い顔に黒くて長い嘴。美しい白い羽を広げて空を舞っている。
あたしはまたも襖を両開きに開いた。
言うまでもなく鴇田がやはり紋を背負ってこちらを向いていた。
左肩から右のわき腹にかけて鴇が羽を広げ優雅に舞うその紋は、陰険蛇田にはもったいないぐらいの美しさだ。
あたしは歩調を速め、パターン化した夢に「やっぱり」と思い、それでもまたも現れた白虎の襖を開けた。
今度は姐さんがさっき見た着物姿で、こっちを見ながら微笑んでいる。
赤い唇に笑みを浮かべ、少しぞっとするぐらい艶やかに―――笑っていた。
あたしは姐さんを通り過ぎると、足を止めた。
最後の―――何となく最後だと予感していた……
その襖には鋭く光る眼孔と、触れるだけでも八つ裂きにされそうな鋭い爪を光らせ、
うねうねと長い胴体はどこまでも続いていそうな……
猛々しい龍が迫力のある…しかしやっぱり美しい顔をこちらに向けていたんだ。