。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
中に誰が居るかなんて、すぐに分かった。
叔父貴―――……
あたしの予想通り、叔父貴はあたしに背を向け、それでも顔だけはこちらを振り返り、ちょっと微笑んでいた。
戒のホワイトタイガーも、キョウスケの鷹も、鴇田の鴇も、それぞれに迫力があって美しいと思うけど……
やっぱり叔父貴の青龍には適わない気がする。
気高き孤高の龍。
叔父貴の龍は常に怒りを露にしているような、怒気を含んでおり、それでいてどことなく哀愁を漂わせ、それでも見る角度に寄っては慈愛に満ちた微笑みを浮かべているようにも見える。
人間が表す微妙な表情をよりリアルに描かれていて、妙に現実的に思えるんだ。
龍なんて想像上の生き物なのに―――
叔父貴……
心の中でそっと呼びかけ、あたしは微笑んだ。
叔父貴も微笑みを返してくれて、きれいな筋肉のついた腕をそっと持ち上げると、あたしを前に促した。
促されて、あたしは前を向いた。
襖ではなく、重圧的なこげ茶の扉があたしの目の前に現われた。
四隅に金色の装飾が施してあって、内枠を縁取っている線も金色だ。
―――あたしは……この扉を知っている。
どこかで見た覚えがある。
とても大切なことなのに、でもどこで見たのか思い出せなかった。