。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。


タクシーで向かった先は、御園(ミソノ)医院とでっかい看板が掲げられた、これまたでっかい総合病院だった。


御園医院は、青龍会お抱えの専属医院だ。


医者もそこで働く看護士たちもみんな青龍会のもんで、組の者も良く世話んなってる。


極道にいると世間に明らかにできない傷をこさえてくることなんてしょっちゅうだし、重要人物の大病など知られちゃならねぇ情報も御園はまるでスイスの銀行並に隠しおおせる。


って前、一度説明したよな?


あれは確か……そうだ、叔父貴の部屋で御園の薬の袋を発見したときだ。


叔父貴も……


やっぱりどこか悪いんじゃ……


だからあんな不吉な夢を。


ううん!そんなことないっ!!


あたしは自分自身の悪い考えを打ち消すかのように頭を振った。


とりあえず今は戒を何とかしてもらわなきゃ!!





御園医院の院長は今は名前だけで、往診はしていない。


実際内科の医務に当たっているのは、内科医院長の鴇田 衛(トキタ マモル)


何を隠そう、あの陰険蛇田の実の兄貴だ。


年齢不詳。独身。


そう言えば、あの蛇田もはっきりした年齢知らないや。叔父貴よりも年上ってのは分かるけど…でも若そうに見えるし、実際いくつなんだ?あの男……


ドクター鴇田はひょろりと背が高く、黒い髪をきっちり撫で付けて、直線的なフレームのメガネがいかにもインテリっぽい風情がある。


蛇田よりも人当たりは良さそうだけど……


はっきり言って変人。





「急性胃炎ですね」




ドクター鴇田はメガネのブリッジをくいと持ち上げて、さらりと言った。


キョウスケの見立てどおりだったことに、あたしは驚いた。




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