。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
二人きりの病室。
六畳ほどの個室で、ベッドと引き出しのついた小さなテーブル。それから小さなテレビとテレビ台が置かれてる他、何もない簡素な造りだった。
妙に殺風景に見えるのはここが病院ということだからだろうか。
だからなかな…いつもより戒が頼りなげに見えたのは……
病室に置かれた置時計のカチコチと秒針を刻む音だけが、妙に大きく聞こえる中、戒はゆっくりと口を開いた。
「俺さ……」
あたしは膝に置いた手にぎゅっと力を入れた。
戒の天井を見上げる視線がゆらゆらして定まっていない。
「やっぱどこか不安だったんだよな」
「不安……?」
あたしが聞き返すと、戒はこちらを見た。天井を見てるときのふらふらした視線じゃない。
まっすぐで淀みのない強い視線。
こいつはいつだってそうだ。あたしを見てくるときはその視線をまっすぐにぶつけてくる。
意思の強そうな、逸らせないまっすぐな視線。
「自分から望んで龍崎の養子になったとは言え、やっぱ超アウェイじゃん。俺にとっていつ寝首掻かれてもおかしくない状況で、常に戦闘態勢を崩せずにいた。
俺が実は虎間だと知られたら、ただじゃ済まされないからな」
「だ、だから叔父貴はお前を養子にしたんだろ?そうならないために」
戒はちょっとくすぐったそうに笑った。
「そーだけど。俺の知らないところで当の龍崎 琢磨は何か動いている。それが掴めなくて、もどかしくて……そう考えると、やっぱ俺――――正直なこと言うと………
ちょっと怖いよ」