。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
危険―――!?
ここは御園医院だぞ?サツも居なけりゃ、敵さえも入りこめない要塞みてぇな病院だ。(見た目普通だけど)
「白衣を着ているけれど、明らかに医者だとは思えない人物がうろうろしています。狙いが誰なのかは分かりませんが、俺たちがここに居るのは状況的に良くないと思います」
キョウスケの冷静な言葉を聞き、あたしはほとんど反射的に病室の扉を開けた。すぐに後ろ手にドアを閉めると、素早く辺りに視線を這わす。
白い無機質な廊下は医師や患者…その殆どが筋もんだと分かるいかつい人物たちが歩いている。
廊下の奥に視線をやると、奥の方の扉がぴしゃりと閉まった。
まるで、あたしたちを監視してるみたい。
強い視線を感じて、あたしは振り返った。反対側の奥の扉の前でドクター鴇田が白衣のポケットに手を突っ込んで、こちらの様子を窺っている。
キラリとメガネのフレームが怪しく光る。あたしの背中にぞっとする何かが走った。
ドクター鴇田は、白衣のポケットから片方だけ手をゆっくりと取り出した。
その手に、鈍い光を湛えた何かがちらりと見える。
外科用メス―――!
お前、内科担当だろ!?何で外科のメスなんか―――
ギラリと不穏に光を湛えるその刃を、あたしは目を細めて見据えた。
視線を集中させ瞳孔を限りなく細め、そのメスの側面を見る。
「―――………」
クスっ
ドクター鴇田は不敵に口の端だけで笑って、メスをしまいこむと、近くの部屋に入っていった。
ごくり、と息を呑んで、あたしは病室に戻った。
きっちりドアを閉めると、内側から鍵をかけた。
こんなこと意味がないだろうけど。
「キョウスケの言った通りだ。ここを出よう。だけど出るときは夜だ。今は目立ちすぎる」
「ああ、そうだな…」
戒は視線を険しくさせて、それでもあたしの提案に同意してくれた。
キョウスケも無言で首を縦に振る。