。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
まずった!!
あたしが戒に気を取られて一瞬、気を緩めたから、男は右腕を振り払った。
鈍く光るその金属の先があたし目掛けて振り下ろされる。
「お嬢に触ンじゃねぇ!!」
キョウスケが怒鳴ると、両腕をバネにして両脚を素早く上げた。そのまま男の首を脚で挟みこむと、柔道の三角絞めの要領で絞め上げる。
これには男も身動きが取れず、力の入ったキョウスケの脚が男の首を絞め上げ、男の手から凶器が滑り落ちた。
「おっと!」戒がそれをうまくキャッチ。
キョウスケはその後も容赦なく絞め上げ、ゴキっと鈍い音がして、男がその場に崩れ落ちた。
「キョウスケ…ま、まさか……死…?」
「そんな簡単に死にませんよ。首の関節を外して、ちょっと眠ってもらっただけです」
「そ、そうなのか……」
キョウスケ…やっぱただもんじゃねぇな、お前……
恐る恐る、ベッドに倒れこんだ男を見ると、男は白目を剥いて泡を吹いていた。
見覚えのない男で、あまり冴えない感じのどこにでもいるサラリーマン風の男。
手の甲に伸びた何か分からないけど、トライバル模様のタトゥーが彫ってあった。
「思った通り……」
「朔羅、知ってンのか?」
「いや…、でも鴇田兄が教えてくれた。外科用メスで」
「……メス?」
そう……ドクター鴇田が廊下でこちらの様子を窺っているとき、あいつは白衣のポケットからメスを取り出していた。あれはあたしたちに警告を促していたんだ。
側面に、怪しい人物の姿を映して。
あたしはメスに映った人物を、見たってわけ。
そのことを二人に説明すると、戒は渋面を浮かべた。
「でもあいつが味方かどうかなんて保障できない。何せあいつは蛇田の兄貴だからな」