。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。


エレベーターを使うわけには行かないから、あたしたちは患者が使うことのない非常階段で降りることにした。


病室があるのは4階で、1階に辿りついたら、その先の逃走経路も確認済みだ。従業員入り口から外に出られる。


外に出ると、キョウスケが用意したレンタカーがあるので、それに戒を乗せる手はずになっていた。


………筈なのに…


階段を2階ほど降り立ったところで、バタバタと階上で足音が聞こえた。


「ちっ!どっちへ行った!?」


「まさか逃げ出すたぁ…」


と物騒な男たちの緊迫した話し声が聞こえてきた。しん、と静まり返った廊下で押し殺した声は響いてくる。


あたしたちは反射的に身を低くし、「先を急ごう」と口を開いた。


ところが、階下からも足音が聞こえる。バタバタと、何人もの足音だ。


何人いやがんだよ!!


敵はあたしたちがここに居ることは知らないようだ。だけど挟み撃ちにされたも同然。


どうすれば…と考えを巡らせていると、非常口の扉がぎぃと開き、振り返る間もなくあたしは何者かに腕を引っ張られた。


声を出す暇もない。手馴れた手付きで口を塞がれ、中に引っ張り込まれる。






誰―――!!?








「朔羅!」

「お嬢!!」


二人も同じように非常口の外側へ飛び出した。


「しー…!」


あたしの頭上で聞きなれた声がして、あたしを引っ張った男はあたしの口元からゆっくりと手を離した。


「ここは専用の鍵がないと入れません。だから安全ですよ」





助けてくれたのは、




ドクター鴇田だった。






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