。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「朔羅!!」
「お嬢!」
戒とキョウスケがそれぞれ声を上げて、眉を吊り上げた。
二人とも瞳に険しい光が宿している。戦闘態勢に入っている激しいものだったけど、同時にひどく緊迫を帯びていた。
あたしは両手を上げてそろりと振り返った。
「久しぶり……ってこともないか。
―――鴇田」
蛇田はにやりと不敵な笑みを湛えると、刀をほんのちょっと持ち替えた。
カチャリ、と独特の金属音が聞こえて、それと同時にそれが切れ味抜群のホンモノの刀であることを思い知らされる。
刀の側面に緊張に歪んだあたしの顔が映し出されていた。
刀を握っているのは左手。右手はハジキ(拳銃)を持って、さらにその銃口をドクター鴇田の頭に突きつけている。
ドクター鴇田はお手上げ、と言った感じでやはり両手を上げていた。
「弟よ」
こんなときでもドクター鴇田はやっぱり何考えてるか分からない。ちょっとメガネを持ち上げると、ふふっと不敵に(?)笑った。
「相変わらず。我が兄貴だが、何を考えてるかさっぱりだ」
「こんな……こんなことして許されると思ってるのかよ!相手は龍崎のお嬢だぜ!!」
戒が勢い込んだ。
確かに…こんなこと…あたしに日本刀を突きつけたって言うことが叔父貴にバレたらただじゃ済まされないだろう。
だけど……
蛇田は口の端でちょっと皮肉げに笑みを湛えた。
ドクターのとは違う。ホントに蛇みたいなぞっとするような笑み。
「私がクーデターを起こすとでも?そんなことしませんよ。私は会長に生涯の忠誠を誓った者。裏切ることは―――ない」
「じゃぁ何で!」あたしが言いかけたときに、
「俺が命令したからだ」
と、闇の中で、また聞きなれた声が聞こえた。