。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
でもあたしはそれに気付かないふりをした。
何となく、今は突っ込んで聞かないほうがいい気がしたし、それに気のせいかもしれねぇし。
「あ~、あたしもあいつらのこと好きだよ。兄弟みてぇなもんだな。っても、あいつらはあたしが叔父貴の姪だから大事にしてるってのもあるんじゃねぇかな」
メガネは泡のついた食器を流す手をふと休めた。
水が流れる音だけがシンクに響く。
「違うと思うよ。単純に、みんな朔羅さんが大好きなんだと思う。人として」
あたしもスポンジでごしごしと洗っていた手を休める。
「メガネ…?」
「僕の家はここみたいに賑やかじゃなかったから」
また哀しそうなちょっと影がある微笑み。
16歳の男子高生が見せる微笑とは種類が違って、それはひどく大人びて見えた。
メガネはきっとあたしの知らない人間の裏の部分をたくさん見てきたんじゃねぇか、咄嗟にそう思った。
それが叔父貴の養子縁組と何か繋がってる気がしたんだ。
「メガネ、お前さっ、前の家はどうだったの?兄弟とかは?」
あたしは食器を再び洗い出した。
何でもないように、極力さりげなく聞こえるように振舞った。