。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「あなた方が喧嘩とは、珍しいですね」
さっき姐さんに股間を掴まれていたときの、慌てふためいた顔から一転、いつもの余裕を取り戻している。
「離せっ!鴇田!!」
あたしは鴇田の腕の中でめちゃくちゃに暴れた。だけど、こいつの腕はぴくりともしない。
的を得ないあたしの拳はふらふらと迷いがあり、力の分散もまばらだ。
絶好調ならこんなヤツ倒してやるのに!
「鴇田、いいところへ」
叔父貴にとってナイスタイミングだろうが、こいつは外で待ち構えていたに違いない。
こうゆう……周到なやつだ。こいつぁ。
鴇田は後ろ手に扉を閉めた。
あたしが暴れたり、喚いていたりするのをまるで外界の住人に知られないように。
ピシャリ、と扉が閉ざされ、外の世界との接触を断ち切られたかのように思えた。
「朔羅。こっちへ来い」
強引に両ワキの下に手を入れ、叔父貴はあたしを鴇田から引き離した。
こんなの叔父貴らしくない。叔父貴は無理やりあたしの嫌がることをしない!!
「何でっ!何でこんなことするんだよ!!
あたしに何か知られちゃならないことが、あるってのかのよ!!!」
あたしの言葉は、特に意味があって言ったわけじゃない。
ただ本当にそう思えたから。
でも叔父貴はあたしの言葉が図星だったのか、一瞬だけ身を強張らせた。
振り返らなくても分かる。叔父貴の憎悪が……
ひしひしと伝わってくる。叔父貴の殺気が。
その無言の圧力は抵抗できないことを、悟っていた―――
あたしに逃げ場は
ない。