。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。


言いかけて、叔父貴は言葉を飲み込んだ。


一瞬だけ…本当に一瞬だけ悲しそうに表情を曇らせる。


何で………


何でそんな顔するの……


そう聞きたかったけど、聞けなかった。


叔父貴はさっきの、怖いほどの迫力をどこかにしまいこみ、優しい顔であたしの頬をそっと撫で上げた。


叔父貴の大きな掌が包み込み、叔父貴の温かな体温を感じた。


いつもの………優しい叔父貴だ。


叔父貴の親指があたしの頬をそっと撫で上げる。


そのとき初めてあたしは、自分が涙を流していたことに気付いた。


叔父貴は切なそうに眉を寄せると、優しい笑みを口元に浮かべた。


そのまま目を伏せると、顔が近づけてくる。


芳しいシャンプーの香りに捉えられ、溺れそうになる。


叔父貴の吐息が間近に迫って、あたしは思わずぎゅっと目を瞑った。


やだ…


こんなのやだよ。





さっきまで大人しかった…ううん、きっと今までだってずっと呼びかけていたに違いない。


戒の声が電話を通してはっきり聞こえた。







『朔羅―――』








< 519 / 558 >

この作品をシェア

pagetop