。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
別に会長がどんな女をご所望だろうと、俺には関係のないことだし、それを咎める理由もない。
実際俺の知る限りでも、彼が関係を持った女は両手で数えられないぐらいだ。
決して派手に遊ぶタイプではないが、彼の内側に入れる女は誰一人として居ない。上辺だけの関係、肉体だけの関係だ。
ただ一人を除いては―――
会長が部屋から出てきたのは入ってから10分ほど後。
さすがに10分では何もできないだろう。
派手な物音も、怒鳴り声も聞こえてこなかった。
会長は……いや、虎間 戒もだな。そして雪斗さんも、何故お嬢にああまでして入れ込むのか…
俺には分からない。
がさつだし、口も悪けりゃ態度も悪い。愛想を振りまくこともなけりゃ、飛びぬけた色気もねぇ。
しかもまだガキだ。
俺から見たら娘のような―――……
そう思って思わず口を覆った。
この考えは止そう。
「どうした、鴇田」会長はいつの間にか薄い唇にタバコを挟んでいた。「考え事か?」そう聞いてくる彼の言葉は、深みのある落ち着いたものだった。
「いえ。そのようなことは…ただ今後どう出るべきか、そのことを少々…」
「そうだな」会長は感慨深げに頷くと、タバコの箱を俺に向けてきた。一本どうだ?と無言で聞かれ、俺はそれをありがたく頂戴することに決めた。
自分のライターで会長のタバコの先に火を灯し、自分のにも点ける。
互いの口から長々と煙が吐き出された。
「お前には……悪いと思っている」
彼の口が動くたびに煙は、彼の口から吐き出され、その煙は行き場のない彼の感情のように辺りを彷徨っていた。