。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「何をおっしゃいますのやら」
俺はちょっと微笑した。心からの微笑だ。
俺は27年前からこの人についていくと決めた。この人を支え、この人の為なら命までも差し出すつもりだ。
もし代われるものなら……俺は会長の未来の身代わりになりたい―――
会長は寂しそうに笑った。
ドキリとして、俺のタバコをつまむ手が一瞬震えた。
16年前の春も―――あの夜も、会長はこんな風に悲しそうに笑った。
淡いピンク色の花びらが空を舞う―――あのむせ返る様な芳香が漂う中。
いや……
桜に香りは無いはずだ。俺の勘違いだということは分かっている。
だけど、
この人は気付いているのじゃないか。
俺の犯した罪に―――
彼を―――手酷く裏切ったあの夜を―――
俺の過ちを……
彼は何も聞いてこない。だけどお嬢を手元に引き取ることで、その罪を背負うことで俺に枷を与えているのだろうか。
俺が生きている限り、一生償えない罪の果てを―――
その眼で見届けようとしているのだろう。