。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
それから酒を少しだけ飲み、会長はソファに横たわった。数分もしない内に小さな寝息が聞こえてきて俺は安心した。
今日は眠れないかもしれない、と思っていたから。
俺はその体の上に毛布をそっと掛けた。
龍崎 琢磨が背負っている肩書きは、青龍会四代目会長。
そして極道の中で唯一無二の存在。頂上に立つ者だけが赦された称号―――黄龍の異名を持つ。
若干二十歳にして、襲名したその地位。
その影には醜く歪んだ跡目騒動が渦を巻いていた。
歪んだ欲望と、策略。裏切りと流れた血の数。会長の通ってこられた道は―――誰もが足を踏み入れることのできない
死の路(ミチ)だ―――
俺は再びソファに座り、会長の整った寝顔を眺めた。
天は今―――試練を若き二匹の龍に与えようとしている。
乗り越えられるか。乗り越えられなければ―――死あるのみだ。
そう、この世界は生きるか死ぬかの世界。
そんなことを考えていると、寝室の扉がキィと音を立てて開いた。
寝室はお嬢が使っているはずだから、当然お嬢が出てきたに違いないが
白い大きめのシャツ一枚だけを纏った女が部屋から出てきて
俺は息を呑んだ。
「百合香―――………?」