。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「え゛!?」
ズサッッッ
お嬢はあからさまに体を引いた。
ふっ、分かりやすい…
「おめぇ…結構歳いってる?」
「さぁ。もしも、っていう設定ですから、私が16のときに生まれたのか、はたまた30のときか。どう思います?」
「し、知るかよ!架空の設定だろ??おめぇは一生バーチャル人生送ってろ!!」
あくまで会長を起こさないよう、小声で喚く。
だがすぐに大人しくなると、興味がなくなったのか、お嬢は会長の寝顔をそっと伺った。
「なぁ、叔父貴どこか悪いの?」
会長の方を見たまま、お嬢は俺に聞いた。その横顔が不安げにちょっと曇っている。
「どこかって?」
「何か悪い病気とか……」
俺の手のひらの中でグラスがわずかに傾いた。空虚な室内に氷の音がカランと鳴り響く。
「どうしてそう思われるんですか?」
「…どうしてって、最近の叔父貴なんか変…。それにちょっと痩せた気がするし」
意外と鋭いな。
何も考えてないただの女子高生かと思ってたのに。
「気のせいじゃありませんか?私は何も存じ上げておりませんが」
「………ふぅん」
お嬢は納得のいってないように目を細めると、会長の頬をそっと撫でた。
「どうして大人って隠し事が多いんだろうな?」
会長の頬を撫でながら、お嬢は無表情に言い放った。
感情のない冷たい―――口調だった。
「鴇田。おめぇもだ。あたしになんか隠し事してんだろ?」
俺はグラスを口につけると、
「―――いいえ」と小さく答えた。
お嬢は会長の頬を撫でていた手をちょっと休めて、俺の方を見た。
鋭い視線の奥に、燃えるような闘志を押し隠して。
会長の―――黄龍の視線だ。
気高き、美しい龍の視線。