。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。



鴇田―――……


くそっ……どこまでもしつこい奴。


「浮気なんかじゃねぇよ。あたしは組のもんに対して誰でもこうだ」


キョウスケはぱっとあたしから身を離すと、「そうだ、お嬢に渡したいものがあったんです。待っていてください」とまた廊下を駆けていった。


あたしは鴇田を睨みつけた。


「あなたの考えることは大体予想が付きますよ。私の目をごまかそうったってそうはいきません」


余裕の表情で薄く笑う。


「別にごまかしてるつもりなんてねぇよ。単に再会を喜び合ってただけだ。お前こそ、何であたしがお前をごまかそうって思ってんだ?」


きっとあたしがこんな風に聞いてくるなんて予想もしなかったんだろう。


鴇田がちょっと虚をつかれたように目を開いた。


だがすぐにいつもの冷静さを取り戻すと、「何となくですよ。お嬢は私をいかにまくかということばかり考えておられそうだったので」と嫌味ったらしく言い放った。


「ふん」


あたしは鼻息を荒くすると、プイと鴇田から目を逸らした。


どこまでも……いけすかない奴。





逸らした視線の先に、桜の木が立っていた。


今はもう花をつけていない茶色い木は青々とした緑色の葉をわさわさと纏っている。


ここの桜はリアルだ。


きれいに咲いたかと思ったら、儚く散って、また次の花を付けるため支度をはじめる。


叔父貴の部屋のジオラマと違う。


時間は確実に流れてる。





そう思って、あたしは目を開いた。




桜………







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