。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
あたしの言葉にメガネは目をぱちくりさせた。
ヤクザは擬制の兄弟間で絆を深める。
そこには確かな血の繋がりなんてこれっぽっちもねぇのに、絆は永遠で、絶対的な主従関係が成り立つ。
つくづく不思議な世界だ。
そんなんで誰も何も違和感や疑問をを抱かない世界。
でも……叔父貴とあたしの関係はそれとも違う。
「あたしの母親の両親はそれぞれ再婚で、お互いに連れ子を連れての結婚だったんだ。
だからあたしの母親とその弟の叔父貴は血が繋がってない。
だからあたしたちは、戸籍上では血縁者だけど、実際に血の繋がりはねぇんだ」
「そう……だったの…」
ちょっと意外という感じでメガネは複雑に笑った。
「朔羅さんのお母さんは、きっと朔羅さんに似てきれいだったんだろうね」
メガネはちょっと瞳を伏せると、口元に笑みだけを残して物憂げに笑った。
あたしは視線を桜の木に戻すと、舞い散る桜の花びらの一枚一枚を目で追った。
きれい……
なんて男に言われたのは初めてだ。
嬉しい…というより、今はちょっと悲しい。
あたしは心臓の辺りをぎゅっと手で握った。
肌に跡が残るぐらい強く。
だって叔父貴は……
あたしに母さんの姿を重ねているから。