。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。

あたしの言葉にメガネは目をぱちくりさせた。


ヤクザは擬制の兄弟間で絆を深める。


そこには確かな血の繋がりなんてこれっぽっちもねぇのに、絆は永遠で、絶対的な主従関係が成り立つ。


つくづく不思議な世界だ。


そんなんで誰も何も違和感や疑問をを抱かない世界。





でも……叔父貴とあたしの関係はそれとも違う。




「あたしの母親の両親はそれぞれ再婚で、お互いに連れ子を連れての結婚だったんだ。


だからあたしの母親とその弟の叔父貴は血が繋がってない。


だからあたしたちは、戸籍上では血縁者だけど、実際に血の繋がりはねぇんだ」



「そう……だったの…」


ちょっと意外という感じでメガネは複雑に笑った。


「朔羅さんのお母さんは、きっと朔羅さんに似てきれいだったんだろうね」


メガネはちょっと瞳を伏せると、口元に笑みだけを残して物憂げに笑った。


あたしは視線を桜の木に戻すと、舞い散る桜の花びらの一枚一枚を目で追った。




きれい……



なんて男に言われたのは初めてだ。


嬉しい…というより、今はちょっと悲しい。



あたしは心臓の辺りをぎゅっと手で握った。


肌に跡が残るぐらい強く。






だって叔父貴は……



あたしに母さんの姿を重ねているから。










< 57 / 558 >

この作品をシェア

pagetop