。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「戒とはうまくやってるか?」
灰で小さくなったタバコを灰皿に押し付けながら、叔父貴はのんびりと言った。
ガラス製の立派な灰皿だ。振り回したら、立派な凶器になる。
誰だよ、こんなもんここに置いたのは。叔父貴の周りにこんな危ねぇもん置くなよ。
「……うまくもなにも。まぁあいつ何か無害そうだし。大丈夫だよ」
「無害……」あたしの言葉を繰り返して叔父貴はふっと涼しく笑った。
だってあいつは叔父貴が好きだから。
女には興味がねぇから。
男は大きく二つに分けられる。
3年のキモ金髪野郎とか、クラスメイトのメガネ2号とかは害がありそうだけど。
叔父貴や組のもん、千里(ついで)はあたしの気持ちを無視して、ちょっかいかけてきたり、手を出してきたりしない。
メガネもあたしに興味がなさそうだから、後者だ。
だから変に意識することもねぇ。
でも、気にはなる。
「なぁ叔父貴。なんでメガネを養子にしたんだ?あんな弱っちそうなヤツ。どう見てもカタギだろ?」
ずっと不思議に思ってたことだ。
メガネは普通のどこにでもいる男子高生だ。
大体にして叔父貴とメガネは正反対すぎる。
歩く凶器みたいな叔父貴と(←ホントに好きなのか?)、歩くぬいぐるみみたいなメガネ。
そんな平穏な人間を、何故わざわざ叔父貴は極道の世界に連れ込んだのか。
叔父貴の子供ってことは、それだけ危険が伴う。
何かとつけてタマ(命)狙われてるからな。
だからあたしたちも、唯一の血縁(?)者でも別々に暮らしてるってのに。
「戒のことが気になるのか?」
叔父貴はソファの肘掛に肘をつくと、器用に片目だけを細め唇を結んだ。
恐えぇ!
何か叔父貴、怒ってる……