。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
叔父貴はあたしを抱っこしたまま、廊下に出た。
「どこ行くの?」
「お前に見せたいものがあるんだ」
叔父貴はまたも微笑みをたたえた。
その微笑がかっこよすぎてあたしはまともに直視できなかった。
照れ隠しのつもりと、落っこちないようにと叔父貴の首に腕を回ししがみついた。
見せたいものって何だろ。
ドキドキ…
叔父貴は寝室に向かうと、片手で器用に扉を開けた。
カチャ
扉が開くと、そこは満開の桜が咲き誇っていた。
あたしは目を開いた。
「わぁ」
思わず感嘆の声を上げる。
たぶん造花だろうと思うが、ベッドの脇に小さな桜の木のジオラマが飾ってあった。
小さいとは言え立派なもんだ。
少し開いた窓から風が入り込んできて、桜の花びらがリアルに舞っている。
「きれい」
「だろ?」
手を差し伸べると、桜の花弁がそっと手に落ちてきた。
色も、質感も申し分ない。
ほとんど本物と変わらない精巧なできだ。
「お前に一番最初に見せたかった」
叔父貴は首を上げてちょっとあたしを見上げた。
気のせいかな。
その瞳がちょっと切なそうに揺らいだように見えたのは……