唇にキスを、首筋に口づけを



「・・・怯えないでくれ。


俺は、お前に何か危害を加えようとか、

考えてない。」




ヤツの声は心なしか震えていた。




・・・何なの・・・?



こいつは一体、



何に、怯えているの・・・?




「心配したんだ、


お前がいなくなったって気付いたときは、本当焦った。



死に物狂いで、探した。」



ヤツは消えそうな声で言う。




私はキョトンとするしかなかった。




な、ん、で・・・こんな風に私、


尽くされている気分になってるんだろう。



おかしいよね。




私。




「お前は隙があり過ぎるんだ、
もっと危機管理能力を持ってくれ・・・


あと・・・」





俺から離れないでくれ・・・。










その言葉の意図が、全く掴めなかった。




ヤツの言葉の真偽が見えなかった。




ヤツの感情が読めなかった。




そもそも、こいつに感情があるのかさえわからない。




私は混乱しかしなかった。




私は硬直していた。



ヤツの心を探るので精一杯だった。



「何故だ、
どうしてなんだ・・・」



ヤツがブツブツと呟いている。



さっきよりも儚くて消えてしまいそうで寂しそうな声で。




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