唇にキスを、首筋に口づけを
「・・・どうしてあいつの名ばかり呼ぶんだ・・・
あの、狩人の名ばかり・・・」
私の耳をヤツの声がくすぐった。
私を抱きしめる力が強くなる。
どくん、どくん。
私の心臓が早鐘をうつ。
・・・どうしちゃったの・・・?
このヴァンパイアは・・・。
どうしてこんなに人恋しそうにしているの・・・?
おかしいよ、おかしいよ、
心が無いような、
冷静沈着なヴァンパイアのはずなのに。
そして私の身体に巻きつく腕を離した。
解放された、
そう思って肩を撫で下ろした。
・・・そのとき。
腰に、
柔らかい手の感触と、
後頭部を押さえる手を、感じた。
「・・・!?!?」
ヤツの顔が、
すぐ近くにあった。
・・・!!
ドン!
私は反射的にヤツのことを突き飛ばしていた。
・・・あ、れ。
私は驚いた。
あれ、
こんな簡単に私、
こいつのこと付き飛ばせるの・・・???
私の力が強くなるなんてまずない、
・・・こいつが、
気を抜いていた・・・?
私はヤツをジロジロと見た。
こいつがそんなマヌケなことするのか。
私は無意識にも息が上がっていた。
悪い。
その一言をヤツが言ったとき、
馬車が屋敷に到着した。
屋敷に入って、
1人部屋で考えるのはヤツの不可解な行動ばかり。
おかしい、謎すぎる、
ヤツの身に、何が起こっているというの・・・?
私は恐ろしくなった。
なんでヤツの行動なんかに一挙一動気をとられなきゃいけないんだ・・・。
そして、
次の日、
私は屋敷の庭へ入るのを許された。
一日中ここにいてもいいと言われた。
そんな嬉しさからか、
ヤツの行動を気にすることは減っていった。