唇にキスを、首筋に口づけを
次の日、昼過ぎになってもゆりなからの帰宅、または連絡もなかった。
ったく・・・近藤も学校じゃねぇのか・・・?
普通に昨日も今日も平日だぞ・・・?
俺はいい加減居ても立ってもいられなくて近藤に電話をかけた。
5コール目で近藤は電話をとった。
「はーい。」
近藤の久々に聞いた声。
元気そうだ。
「俺。爽哉」
俺は名をたんたんと名乗る。
「えー?あ、うっちー!?
どったのー??」
どったのって、
いや、察せ。
「ゆりないい加減返してくんねー?」
俺は怠さが言葉に出てしまった。
近藤のアホさに少し気がったのかもしれない。
「え?ゆりな?
昨日夕方にバイバイしたよ?」
え・・・?
ビクリ、
俺の背中に何かが走った。
氷かなんかを服の中に滑りこまされたような感覚。
・・・は?
ちょっと、待てよ。
まさか、違うよな。
違うよな、ちげぇって思いたいけど・・・!
・・・俺は一瞬で悟った。
ゆりなは、きっと何者かに攫われたんだ。
どうも職業柄、危険察知能力は我ながらズバ抜けてるとおもうし、頭もよく回ると思ってる。
っ、誰だよ・・・。
それが犯罪者なのかヴァンパイアなのかは知らねぇ。調べる。
んで、近藤はアホだからゆりながいないとかわかったら速攻で警察とかに連絡するんだろう。
そんなんダメだ。
でも、とりあえず俺は昨日ゆりなと近藤がどこに居たのかもしらねぇし、
別れた場所も知らない。
ゆりなが俺の家に帰っていること、
そしてゆりなと近藤がどういう行動をとったのかを探らねば。
俺はこれを1秒程度で考えた。
「え!?ゆりながいなくなったとか言わないよね!?」
案の定、
近藤は騒ぎ立て始めた。
演技しろ、俺。
「はははっ、
ちょ、まじ、爆笑・・・」
俺は演技の空笑をする。
「・・・へ?」
近藤のマヌケな声が電話越しに聞こえる。
「・・・ちょ、まじ、やばい。
いや、俺も今さっき起きたんだけどさ、
ゆりなが俺のことおこさねぇからおかしいなって思って、ゆりなが近藤のとこ泊まってると思って電話したんだけどさ・・・。
髭剃りに洗面所行ったらさ・・・くくっ、
ゆりな風呂上がって着替えたとこで脱衣所で寝てる・・・はははっ・・・!」
そして俺は爆笑している演技を加える。
「それ、まじ!?!?
それは爆笑!!」
そう言って近藤はいとも簡単に信じた。
よかった、単純なやつだった。
「まじお前ら昨日何したの・・・ははっ」
「何って、
私らの最寄りで食べ放題行って語ってそのまま駅でバイバイだわ・・・はははっ!!」
「まじか。あ・・・んでもって、ははっ、
ゆりな風呂にケータイ落としてるっぽい・・・くくっ、
まじで、連絡もつかないとおもう」
そう言って俺は笑った。
「まじゆりな最高、はははははっ・・・!
そかそか、了解・・・くくっ、
まじ今1人でいるからさ、1人で笑ってるみたいになって恥ずかしいから切るわ。」
そう言って、バイバーイと言ってヤツは電話を切った。
・・・はぁ。
俺は胸を撫で下ろす。
・・・やばい、
これは、
いよいよやばい奴だ。