唇にキスを、首筋に口づけを



魔界に入り込んで最初に見たものは、針葉樹の森であった。




道はアスファルトではないが、人が通れるようにある程度舗装されている。




まぁ・・・ヴァンパイアが人間界に入り込むのに重要な道であるからだろう。



だとしたら・・・活動は少ないにしても、身を潜めているヴァンパイアが居たりするのだろうか。




俺は辺りをキョロキョロ見回す。



くそ、一人だと後方確認が難しいな。




今になって緊張し始めた。




その時だ。



「ニン・・・ゲン・・・!!!」



俺の耳に、そんな声が入ってくる。



突如俺の前に立ちふさがる赤く飢えた瞳を持った男。



くっ!

俺はすぐにトリガーをひく。



バン!と銃声が鳴り響き、鳥たちがバサバサと飛んでいく音が聞こえる。



俺は目の前に現れたヴァンパイアをしとめ、砕ききってからまた前へ進んだ。




そして何分かたつと、森から抜けられ、高い丘へと出てきた。




俺はバイクにまたがりながら、眼下に広がる魔界を見る。




中世ヨーロッパ、そんなイメージを持つ。



人間界より文化は進んでいないようだ。




道を通るのは馬車が最も速い乗り物かな。



俺は考えていた。



ゆりなを攫った・・・

ジュンとかいうヴァンパイア。




あれだけ力が強いんだ。



ヴァンパイアの地位も高い。




そういう風に予測を立て、


城のような、大きい家が、ヤツの家なのではないか、と思っていた。




そして俺の今いる丘から少し離れてまた出っ張った丘の上に、


もの凄くキレイな屋敷が建っていた。




アテはないが、行ってみるしかない。



魔界の広さもわからないけれど、シラミつぶしにやっていくしかない。






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