唇にキスを、首筋に口づけを
俺は耳に全神経を集中させる。
ヴァンパイアは全ての身体能力において人間に勝るが、
俺はそこまで聴覚に優れていない。
気をつけなければ、聞き逃してしまう。
俺は動かないようにピタリと止まったまま二人の会話に集中する。
「そうだな・・・心配だ。
ろくに飯とかちゃんと食ってんのかな・・・」
「私が届け物のために少し顔を出したらものすごく、痩せこけていたわ。
隈もとても酷くて・・・。」
「そりゃあそうだよな。
家族を二度も、ヴァンパイアによって失っているんだからな。」
「私たちが仇を討つしかないね。」
そう言いながら、二人は俺の近くから遠ざかっていく。
・・・ドクンドクン、
俺の心臓が気持ち悪いくらいに収縮をする。
・・・ゆりなが、ゆりなが苦しんでいる。
・・・助けてやりたい。
・・・俺が彼女の傷を埋めたい。
彼女を笑顔にしたい。
散々魔界で彼女を拘束した俺だけど、本当は笑って欲しかった。
外に出してやったとき、笑ってくれて、俺はとても嬉しかった。
もう一回、笑顔になってほしい。
けど俺には到底できることではない・・・。
だって俺は、
彼女の家族を奪った者たちの仲間だから。
どうして俺はヴァンパイアなんだ。
何で、こんな種に生まれた。
俺自身が人間になることはできないけど、
もっと俺たちを見て欲しい。
俺は、俺は、
ゆりなを傷つけたりなんかしない!!
以前は苦しめて傷つけたけど、今はもう絶対にしないから。
ヴァンパイアは悪いやつだけじゃないんだ。
俺たちを、もっと、一人一人見て欲しい・・・。
クソ・・・、
クソが、
勝手に、足が動く。
勝手に、鼻が、ゆりなの匂いを追ってる。
・・・
拒絶されるなんて分かってるさ
けど・・・会いたい。
会わずにはいられねぇんだよ。
ジュンside end